MSCの紹介とコンテナ追跡方法

2022/05/21 Updated on 2023/08/21
Ayana

Ayana代表取締役CEO

神戸大学文学部を卒業後、楽天株式会社に入社。ECの基礎を学ぶ。その後、外資系メーカーに転職しメーカー側の課題に直面する。夜間MBAにて経営戦略を学ぶと同時に、FMCGよりもラグジュアリーブランドにおけるマーケティングに興味をもち、フランスESSECに留学。帰国後、外資系化粧品メーカーのECマネージャーやスタートアップCMO等を経て、MonCargoを創業。

MSCとは?

MSC(Mediterranean Shipping Company)は、スイスのジュネーブに本社を置く海運業界のリーディングカンパニーです。2021年にはコンテナ船社運航規模ランキングで世界首位となりました。

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スイスというと、山やスキーのイメージがあると思いますが、スイスは内陸国であり、海には面していません。では、どうして内陸国のスイスで、海運業界ナンバー1の会社が生まれたのでしょうか。今回は、スイスと貿易、海運について簡単に触れたあとに、MSCについて紹介したいと思います。

スイス経済の概要

世界貿易は、重量ベースでみると90%以上が船・海上輸送によって行われるため、貿易と海運は切り離して考えることができません。一方、内陸国であるスイス経済は、外国貿易に大きく依存しているのです。

それでは、スイス経済の構造をまずはじめに理解していきたいと思います。

スイスの地理、および、スイス経済について簡単にまとめられた図があるので引用させていただきます。

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出典: (FDFA)[https://www.eda.admin.ch/aboutswitzerland/ja/home/umwelt/geografie/geografie---fakten-und-zahlen.html]

スイスはこの図にある通り、内陸国で、イタリア、フランス、ドイツ、オーストリア、リヒテンシュタインの5か国に面しています。そして、スイスは水源が豊富で、ローヌ川やライン川の源流はスイスにあり、ヨーロッパの飲み水の約6%を占めているのだそうです。

では経済はどうでしょう。

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出典:(FDFA)[https://www.eda.admin.ch/aboutswitzerland/ja/home/wirtschaft/uebersicht/wirtschaft---fakten-und-zahlen.html]

スイスといえば、ロシュやノバルティスなどの製薬会社、ネスレ・ネスプレッソなどのコーヒーメーカーに、リンツをはじめとするおいしいチョコレート、そしてROLEXを代表とする最高級時計…。そのイメージ通りの図、ではないでしょうか?

スイスのGDPにおいてサービス産業が約74%を占め、輸出入の約半分はEU、そのうち最大の貿易相手国はドイツです。また、輸出入のうち、化学・製薬品は半分、時計は8%を占めています。

ちなみにこの図にはありませんが、スイスは研究開発(R&D)にも積極的に投資しており、年間約230億スイスフランーGDPの約3%に相当する額が費やされています。そのうち3分の2が民間企業によって、さらにそのうちの約35%は製薬・化学産業とのことです。そういえば世界的ベストセラー『天使と悪魔』(ダン・ブラウン著, 2000年)に登場するセルン=欧州原子核研究機構は、世界最大の素粒子物理学研究所を運営する政府間研究機関ですね!

さて話を貿易に戻しましょう。

2020年では輸出額は4,420億スイスフラン(物品・サービス合計。物品のみは2,250億スイスフラン)、輸入額は3,770億スイスフランでした。2021年にも貿易額は過去最高額を記録。新型コロナウイルスの影響もあり、輸出額の50%を占める化学品・医薬品の伸び率が+12.4%、8~9%を占める時計の伸び率が+31.2%と、輸出を大きく牽引しました。ちなみに、2022年第一四半期も過去最高水準を達成しました。ウクライナ情勢の影響により、エネルギー・電力の輸入が増え、貿易収支は-28億スイスフランになりましたが、それでも貿易黒字は維持されました。

スイスの経済収支は黒字ですが、貿易収支が黒字であることが大きく影響しています。

スイスにおける貿易と海上輸送

Logistics Advisory Experts GmbH - University of St Gallenから出されたホワイトペーパー※は40ページにわたって、スイスの貿易における海運の重要性を強調する研究を示してくれています。今回はこのホワイトペーパーをもとに紹介したいと思います。

さて、海に面していないスイスの海上貿易を支えるのは何かというと、スイスから、リヒテンシュタイン、ドイツ、フランス、ベルギー、オランダなどを結ぶ、古代からヨーロッパ経済を支えてきた、ライン川です。

スイスのバーゼルは、チューリッヒ、ジュネーブに次ぐスイス第3の都市であり、ライン川の執着地でもあります。ドイツ・フランスと国境を接する地域であり、各国が鉄道のターミナル駅を置いています。

そのバーゼルから、ロッテルダム(Rotterdam)アントワープ(Antwerp)そしてアムステルダム(Amsterdam)ーこれらを称してARA-rangeといいますーを結ぶライン川沿いが、スイス水路を支えています。例えば、精製された石油は、このライン川を通って、スイスに輸入されます。欧州水路の大動脈ともいえるライン川ですが、スイスにおいては輸入の10%と輸出の5%がこのライン川の港を経由して輸送されたそうです。

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地図出典:d-mapsから筆者編集

また、ライン川を使わない輸送手段もあります。冒頭で紹介したとおりスイスはコーヒーでも有名ですが、その原材料となるコーヒー豆はブラジルやコロンビア、ベトナムなどから海上輸送でスイスに輸入されます。その場合の代表的な入荷サプライチェーンは、ハンブルク港を経由して、トラックや列車でスイスに輸送されます。トラックや列車などの陸上輸送もスイスでは非常に重要な役割を担っていることが容易に想像できます。

ただ、大陸間の貿易となるとやはり航空便もしくは船舶のみとなります。時計や精密機械は航空便との相性がいいですが、コーヒー豆や石油などバルクで運ぶものは海上輸送になります。アジアとヨーロッパを鉄道で結ぶ新しいシルクロードを使ったとしても、海上輸送の量には届きません。

このホワイトペーパーによると、巨大なコンテナ船(MSC Gülsün:23,756 TEU)に積載されているすべてのコンテナを、もし1つの列車に並べるとすると、その列車の長さは340km以上に達するとしています。

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出典:Logistics Advisory Experts GmbH - University of St Gallen Spin Off - Switzerland dependency on maritime transportation

ですから、どれだけの多くの貨物が新しいシルクロードを使って輸送されたとしても、やはりボリュームの観点から海上輸送の重要度がかわることはない、としています。

今回は一部抜粋してまとめさせていただきましたが、さらに詳しく、スイスにおける海上貿易の重要性を知りたい方はぜひこのホワイトペーパーをご一読ください。
詳しくはこちら

MSCとアポンテ家

それでは最後にMSCの歴史について簡単にお話しましょう。

MSCはファミリーカンパニーで、創業は1970年。創設者はイタリアのソレント出身のジャンルイジ・アポンテです。
MSCの創業は1970年ではありますが、イタリアのアポンテ家はナポリを拠点に、17世紀から続く海運業者でした。ジャンルイジ・アポンテ船長はイタリア海事アカデミーを卒業後、主に地中海で家業である海運業を継いだところからキャリアをスタートさせます。

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2019年 ナポリにて筆者撮影

そんななか、1960年代にカプリ島でスイス出身のラファエラに出会います。二人は結婚して、ジャンルイジはスイスに移住し、銀行員に転職。しかし1970年、彼は海運業界に戻り、一隻の貨物船パトリシアを購入。Mediterranean Shipping Company(MSC)を創設しました。

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2019年 カプリ島にて筆者撮影

MSCがスイスにあるのは、スイスにおける海上輸送の重要性はもちろんですが、歴史を紐解くと、もともとナポリのジャンルイジが、スイス人女性ラファエラに出会ったことがはじまりということですから、素敵ですね!

さて、MSCは翌年にはより大型の貨物船ラファエラ(妻の名前にちなんだといいます)、1973年には貨物船イルゼを就航しました。1988年、MSCはクルーズ業界へも参入。クルーズ会社のラウロ・ライン社の買収等を経て、MSCグループの子会社として「MSCクルーズ」を設立。今ではMSCクルーズは世界第3位の規模を誇るクルーズ船会社になりました。

その後MSCグループは、内陸部及び港湾ターミナルのオペレーション、インフラ整備など、事業の多角化にも成功しました。

特に注目すべきはTiL(ターミナル・インベストメント・リミテッド)です。TiLはディエゴ・アポンテによって設立されました。ディエゴ氏は、1990年代後半にターミナルインフラ事業に機会を見出し、2000年、コンテナターミナルへの投資や開発、積極的な管理などターミナルオペレーションを担うTiLを立ち上げました。これにより、MSCの主要港におけるコンテナターミナルのキャパシティが確保され、MSCのコンテナ事業はさらに成長しました。TiLは今は世界最大のコンテナターミナル運営会社の一つにまで発展しました。

2023年現在、ジャンルイジ・アポンテはグループ経営執行役会長となり、TiLを設立した息子のディエゴ・アポンテ氏がMSCグループの社長/CEOに就任されています。また、ディエゴはTiLの会長も兼任しています。

そして、アポンテ家は独立非営利団体であるMSC財団を設立し、MSCのこれまで培ったグローバル展開と海に関する独自の知識を活用し、環境保護と人道的活動に力をいれています。
MSC財団について詳しくはこちら

今回は、スイス経済と海上輸送の重要性、そしてMSCの歴史について紹介させていただきました。
さらにMSCについて詳しく知りたい方はMSC公式サイトをご確認ください。

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画像出典:MSC公式サイト

出典:

MSC 輸送コンテナ 追跡・トレース方法

MSCは、サイト内で、コンテナ番号、船荷証券番号もしくは予約番号から検索することが可能です。

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コンテナ追跡にはMonCargoトラッキングサービスがおすすめ

各船会社のトラッキングは、各船会社のサイトでも確認いただけます。一つの船会社しか扱わない場合は、これらのページで確認するのがいいかもしれません。

ただ、一つの船会社だとしても、コンテナのスケジュールがかわっていないかどうかを都度確認しにいくのは、時間がかかります。また、ETAのスケジュール変更があったかどうかを、他の関係部署の方に聞かれる場合もあります。複数の船会社を利用している場合はさらに管理が複雑です。

MonCargo(モンカルゴ)なら、スケジュールに変更があった場合にメール通知がくるので見逃しません。また同じコンテナを追跡している人が社内にいた場合は、チームでコンテナ情報をシェアすることが可能なので、メールやチャットのやり取りなど情報を共有する手間を省くことができます。

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